今はやりの印刷インターネット通販に挑戦しているというのはこの連載コラムでも逐次お伝えしている通り。一回目は計画している。ニ回目ははじめました。と来て、さてどうなったか、お伝えしなければいけないのだが、正直避けたい気分である。インターネット通販をはじめるにあたり、それなりに研究もしたし、ネット通販向けの商品もとりそろえたつもりだったが、客が来ない。まったく来ない。注文はおろか、問い合わせすらまったく来ない。
これでは社内の目も厳しいわけで、緊急にチームを集めて分析会議である。インターネットにはログ解析という技が使える。どのページにどこから何人来ているかという情報が得られる。で、まずは印刷通販のページにそもそも人が来ていないことがわかった。当社のホームページは多言語組み版という特徴を活かしたページ「世界の文字」や学術書関係の情報提供ページ「インパクトファクター」など結構人気が高く、100万アクセスを誇ってきたのでこれは意外だった。つまのはお客さんは目当てのページに直行して、印刷通販のページなど一顧だにせずにかえってしまうのだ。もっとも、こうした客を集められるページから印刷通販のページへの連携がよろしくないということもある。
とにかく、人が来てもらわなければどうにもならない。今までは強力な人寄せページがあってそれに頼り切っていたわけだけれど、そこに来る人はお客にはなってくれるわけではないということがはっきりした。まずは「印刷したい」という要望のある人をネット通販ページに誘導していかなければならない。それには検索ページに載ることが一番だ。
普通、インターネットでの買い物客はまずは検索エンジンで自分の買いたいものを検索する。ところがこれが一筋縄ではいかない。ためしに検索エンジンYahooに「印刷」と入力してみると、4億件を超えるサイトがヒットする。4億件の中に埋没してしまったら発見されることはまず不可能だ。できるだけ前の方に表示してもらう必要があるわけだが、この検索エンジンの表示順というやつが、各検索エンジン会社の腕のみせどころなのだ。実際、検索のキーワードを入力しても関係ないページや広告満タンのページなんかが表示されては、検索する方はたまったものではない。できるだけ有用なページを上位に載せるようにしなくてはならない。手前みそだが「世界の文字」と入力するとYahooもGoogleも当社のサイトがトップでヒットする。
さて、ここで大人の世界の話。検索エンジンにはお金を払うと、先頭に表示してくれるというサービスがある。お金を払うと上の方に載るわけだからこれは当然ヒット率も高くなる。だめもとで一度これをやってみようということになった。調べてみると、そんなに価格が高いわけでもない。
しかし、この商売、うまい。そして検索エンジンというビジネスがこれほど繁栄するという理由がわかった。単に、金を払えば上位に載せてくれるものだというぐらいに漠然と考えていたのだが、ことはそう単純な話ではない。たとえば「印刷」なんていう言葉は全国中の印刷会社がそろって上位に載せてもらいたいわけで、いっせいにその注文がいく。もし広告主の以来を全部聞いていたら、広告ページだけで検索エンジンが埋まってしまう。驚いたことに、この広告上位に載せるのはオークションで決まるのである。お金をたくさん提供すればより上位に載せてあげますよというわけだ。この仕組みには脱帽だ。これではお金を払ってお願いせざるをえなくなってしまうことになる。それにキーワードも複数登録でき、それぞれが何回クリックされたかなど、ネットを通じて一瞬でわかる。インターネット広告費は新聞広告費を上回ったというが、これは確かにすごい。
と、インターネット広告を出すだけで感心してしまっているのだが、果たしてその結果、どうなったかはまた次号でお話ししましょう。