第43回 宇宙から印刷|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第43回 宇宙から印刷

 最近のテレビはつまらない。仕事がおわって家でニュース番組でものんびり見たいと思っても、テレビの中では芸もないタレントがわるふざけをしているだけだ。アメリカのCATV(ケーブルテレビ)だと、ニュースばかり、映画ばかり一日中やっているチャンネルがあるときき、あこがれていた。しかし京都にはケーブルは一向にこない。


 そこへ、CSテレビが登場した。スカイパーフェクTVとかディレクTVといったサービス名で知られるやつだ。これこそ何100チャンネルものチャンネル数をもち、都市型CATVに近いコンセプトのものらしい。見たい番組を見たい時間に見られなくて不満だった私は、半信半疑ながら加入してみた。


 実は、私たちは物ごころついたときにはTVがあった最初の世代になる。その後、小学校でカラーTV革命に遭遇し、大学のときに音声多重放送、そして、最近のハイビジョンまでさまざまなTVの進化につきあってきた。だが、基本的にチャンネル数は、生まれてこのかた、6~8チャンネルしか選択することができなかった。UHFテレビ局の誕生でチャンネルが1つ増えたのだって、もう30年ちかく前だ。チャンネル数で見れば、ものごころついてからほとんど進化がなかったことになる。なにせ、衛星放送(BSテレビ)ですら、NHK2つとWOWOWだけなのだ。それが、CSとなっただけで、本当に100チャンネルもできるものだろうか。


 ところが、実際に見て、たまげた。本物だったのだ。望み通り、朝から晩までニュースばかりのチャンネルは言うに及ばず、映画ばかり、スポーツばかり、という具合に100チャンネルというのはまさにそのとおりなのだ。スポーツ番組などでは、ゴルフばかり、競馬中継ばかり、プロレスばかりという様に細分化されている。野球など完全中継で、試合が終わるまでやっている。確かに、チャンネル数が多いだけに、番組つくりが雑であったり、昔のテレビ番組の再放送が多かったりする。それでも、ニュースや天気予報がいつも見られるのは新鮮だ。確かに、CSをいれてから既存の放送を見なくなった。


 さらにおもしろいのは、ペイパービューだ。これは、特定のテレビ番組を見るたびにお金が口座から引き落とされるという仕組みで、最近の映画とか、特別なスポーツ放送などが対象になっている。みたい番組だけを特定にねらいうちして買うわけだ。こんなものを使うことがあるかなと思っていたが、さる色っぽい分野だと結構これで見てしまう。


 まだある。ちょっとリモコンを操作するだけで、画面に番組解説や放映予定の文字情報が呼び出されたりと、とにかく、テレビを便利にする機能がもりだくさんなのだ。これは真にテレビの革命といっていいと思う。


 実は、CSテレビはデジタル技術、すなわちコンピュータ技術の塊なのである。何百万軒の末端の家庭を相手に、番組単位で課金の管理を綿密にやるなどということはコンピュータなしには考えられない。NHKのように、見ても見なくても一定額というのではなく、番組の視聴パターンごとにきめ細かに課金されていくのだから、すさまじい。


 この夏ごろからは、宇宙からコンピュータのソフトウェアやデータを配信するという。データはプリンタで印刷できるわけで、「宇宙から印刷が降ってくる」のだ。おそらく、インターネットをもっと大衆的にした姿がそこにある。印刷屋になんの関係があると思われたあなた。とにかくごらんになるといい。そして21世紀の印刷屋がどうあるべきか、じっくりと考えよう。繰り返すが、これは革命だ。



ページの先頭へ