Wikipediaがおもしろい。どんどんおもしろくなってきている。なんといっても項目の増え方が尋常ではない。すでに日本語版は30万項目を越えた。以前は、Wilipediaで調べようにも該当の項目が載っていないということが多かったのだが、今や、よもやこんなものまでというような項目まで、丁寧な解説がついている。妻も中学生や小学生の息子も、何か調べたいことができれば、Wikipediaでさがしている。むろん、項目の数だけではない。内容の充実度も飛躍的に向上している。毎日毎日解説が詳しく長くなる。
Wikipediaはインターネット上の百科事典だが、インターネット上の百科事典というだけなら今までいくらでもあった。紙の本が売れなくなった後のビジネスモデルとして、出版社が期待をこめた時代もあった。ネットそれ自身が百科事典ともいえるが、Wikipediaの特徴はインターネットだからこその作り方がされていることだ。書き手がプロではなく、読者なのだ。自分が知っていて、Wikipediaに載っていなければ、自分で即座に追加できる。これでは、嘘も書きたい放題だと思うが、意外にその問題は少ない。間違いが書き込まれても、ただちに誰かが正しく修正し直すからだ。まさしくWeb2.0。大衆参加型ネットワークを地でいく存在なのだ。もちろん閲覧は只である。一切費用がかからない。
これがとにかく役に立つ。印刷会社役員として紙の印刷業の行く末を考える上で、Wikipediaを知らなければという、つまりは敵を知るためのつもりで見始めて、すっかりはまってしまった。ちょっと時間があいたとき、ネットサーフィンならずWikipediaサーフィンをやりだすととまらない。本当に何でも載っているのだ。学術全般、人物、会社、マスコミ、そして、おたく関係。WEBページをたどるネットサーフィンよりはるかに、見やすくて役に立つ。おそらくそれは、体裁や内容に一応の統一感があるからだ。ネットサーフィンだと、体裁も質もそれこそ千差万別のWEBページ中にほおりだされ、疲れ果てるし、個人が思いこみで書いているから、やたらに詳しいところがあるかわりに、重要な項目が抜けていたりして、なかなか過不足のない記述にお目にかからない。Wikipediaは基本的な客観情報がとにかく統一的な体裁で網羅されているから、使いやすい。
そして読むと、書き込みたくなってしまう。実際、私自身印刷関係の項目などずいぶん書き込ませていただいた。知の蓄積をボランテイアで図るというような崇高なモノではない。とにかく、知っていることが載っていないと書き込みたくなる。書き込んだ後に、誰かが補足していたりすると、感心したり、対抗心をもやして、さらに詳しくしたりもする。自分の知が他人の知と合流して大河になる喜びというのだろうか、掲示板で気の利いた返答が書けたときの感覚に似ている。こうした私のような書き込み魔が何万人もいるとすると、Wikipediaは充実もするはずだ。しかも、百科事典のように執筆から出版までのタイムラグもない。まさに毎日、最新情報に更新されていく。
英語版はさらにすごく、すでに100万項目を越えている。項目の解説分量も半端ではない。100万というと古今東西どんな百科事典もかなわない。1項目1頁として100万頁は1000巻にも値するのだ。最近の流行後「萌え」も、英語版で解説されていた。これは「萌え」ます。しかしこのままではすまないのが、ネット社会のこわいところだ。これだけ注目を集めれば、意図的な妨害や荒らしにもあうだろうし、内容に関して虚偽や盗作が判明して閉鎖されるということもあるだろう。ネットはいつもそうだった。掲示板も最初は良心にもとづいた心地よい空間だったのに、いつのまにか殺伐として荒れ、使い物にならなくなっていった。SNSもすでに初期ののどかさからは遠い。
それでもWikipediaだけはこのまま健やかに成長が続くことを願わずにはおれない。あまりに便利であまりにおもしろい。Wikipedia萌え!