第17回 子供も使うコンピュータ|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第17回 子供も使うコンピュータ

 私の書斎の机の上には、Windows95パソコンがある。膝の上には(たいてい)子供がいる。下の子が生まれてから、2歳の男の子のお守は私の役目であるのだ。もちろん、家内に言わせれば、私は仕事でほとんどいないから、一日のうち何分の一かを分担しているだけなのだけれど。


 この子は必然的に毎日パソコン画面を見ることになる。最初のうちは、私がお絵描きソフトで、円と矩形を組み合わせて象の絵でも描いてみせると喜んでいた。そのうち、自分でもマウスをさわりたがるようになった。はじめは意味もなくガチャガチャ動かしていただけだったけれど、やがて右クリックと左クリックの意味を覚えたようだ。ダブルクリックはさすがにできないが、何かおこるまで何度もクリックを繰り返すので結果としてダブルクリックになっている。これで実用上何の不便もない。


 子供向けのCD-ROMというのがある。動物や乗り物など子供の好きそうなものが、CD-ROMにしたててあって、絵をクリックすると、動いたり、音をだしたり、画面がかわったりする。こんな面白いものを子供がほっておくわけがない。たちまち夢中になって、私の膝の上で飽きずCD-ROMを操っている。当然、CD-ROMの円盤をトレイにおいたり、イジェクトボタンを押して装填したりもできるようになった。


 今では、パソコンのスイッチをいれ、おきにいりのCD-ROMをさしこみ、アイコンをクリックして、勝手に遊びはじめるようになった。終わるときも例のWINDOWS95の終了画面「電源を切る準備ができました」の表示がでてから、スイッチを切るようになった。うーーん、これはやはり「2歳の子供がWINDOWS95を使っている」といってもいいのではないか。


 不思議なもので、子供は大人が今現在していることをしたがる。私が電気ひげ剃りを使っているのを見て、やはりあごにひげ剃りをおしあてたし、電話のまねはコードレスホンにみたてたブラシの柄の部分を指でつついてプッシュしている。必然的に私がキーボードをカチャカチャさせていれば、やはり、キーボードをたたきたがるし、散らかったフロッピーを見つけてはドライブに差し込む。これはもうコンピュータに対する馴染み方が、私たちとは根底から違う。


 私たち自身は、大学時代にパソコンのあった最初の世代だった。それでも、コンピュータを覚えて社会にでてきたというので珍しがられ、ある意味では畏怖された。今の新入社員は中学くらいでパソコンをおぼえている。彼らにとってコンピュータはより皮膚感覚に近いようだ。


 私の子供達にいたっては生まれた時から各家庭にコンピュータがあった最初の世代になる。物心つく前に、すでにコンピュータの操作法を体で覚える世代だ。もはや体感覚そのものだろう。下の子供にいたっては、生まれる前に「インターネットが家に通じて」おり、その誕生の顛末がインターネットで世界に発信された子供になる。彼らが育っていくと、どんな世の中になるか楽しみのようであり、不安でもある。絵本より先にCD-ROMに馴染んだ君たちはパパたちのつくっている印刷物なるものを手にとってくれるかね。


 もっとも、私たちだって「物心つく前からテレビがあった」最初の世代でもある。30年前の評論などを読んでいると、「彼ら(わたしたちの世代のこと)テレビ世代は我々とまったく異なる文明を築くだろう」などと書かれていて、尻がこそばゆい。・・築いたのかな。



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