第2回 フロッピー入稿の現在|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第2回 フロッピー入稿の現在

 フロッピーで原稿がはいるのが一般化してボチボチ5年ほどになるだろうか。最近では、原稿がほとんどフロッピー化されて、入力部門の手がすきぎみにすらなってきた。世の中で、頻繁に原稿を書くような人種、つまり学者とか新聞記者とかいう連中が手書きをまずしなくなってきているので、これは当然の傾向だろう。私自身いまこの原稿は、パソコンで書いている。


 しかし、フロッピー入稿をめぐる状況はあいかわらず。クライアントの方はフロッピー入稿をコストダウンの神様のように思っているのに、実際はかえって手間のかかる場合が多いのだ。相手はプロじゃないのだからあたりまえなのだけれど、持ち込みフロッピーには意外に誤植が多いし、約物の打ち方なんかにも統一がまるでない。持ち込んできた方は、フロッピー入稿だから誤植なんかありえないと、あんまり校正を見ないものだから、誤植だらけのものが出版されてしまったりする。そういうことのないよう、フロッピー入稿を親切にサポートしようとすると、コストがかかってしようがない。


 それに、もちこまれてくるフロッピーの多様さは想像を絶している。かたちはどれも同じフロッピーだ。8インチフロッピーがほぼなくなってしまった現在(8インチをいまだに麗々しくつかってるのは、印刷業界くらいだよ)、3.5インチと5インチしかないのに、2DD、2HD、1.2Mフォーマットに、1.44Mフォーマット、dosテキストから専用ワープロまで、ありとあらゆるものが舞い込んでくる。もちこんでくる方は、たとえば3.5インチならみんな共通にあつかえると思いこんでいるのだから、難儀だ。もっともこれはお客さんを責めるのは筋違いだ。フロッピーの無政府状態の方をせめるべきだろう。これからは。MO(光磁気ディスク)入稿も増えそうだし、画像フォーマットとなりゃ、もう考えるだに頭痛がする。


 こんな無政府状態がまかり通っているのも、あまりフロッピーの相互互換ということに気がつかわれていないからだ。最終的には力の強いフォーマットに統一され、それは自社の物だという「読み」が、メーカー各社にはあるんだろうけど、印刷屋の重複投資はどうしてくれるんだろう。うちのコンピュータルームなんざ、各機種、各社のワープロソフトやDTPソフトの箱が積み重なって雪崩をおこしそうになっている。そうでなくても、目的のソフトを探して、遭難するのはしょっちゅうだ。


 いずれ、MACでレイアウト・組版から、写真製版まで、なにもかもお客さんがやってくれて、印刷屋は出力するだけと思っているあなた。それは甘い。今のただの文字テキストだけでも、クライアントのモノっていうのはそのまま使えないんだよ。写真製版なんかがまともにできてくるはずがない。どっちにしても、印刷会社である程度いじってやんなきゃ、製品になんないですよ。もしクライアント側で完全版下FDが完璧にできる時がくるとあなたが思っているのなら、印刷屋なんかいますぐやめた方がいい。出力するだけで、利益をあげられますか。それにデスクトップにイメージセッタなみの高解像度出力装置がいきわたるのは時間の問題なのだから、出力もクライアント側ですませてしまうでしょう。


 問題ありのフロッピー入稿だけど、とことんつきあってみると、コンピュータの状況には詳しくなる。いま、どんなソフトがはやっていて、どんな機能があるか、手に取るようにわかる。そこから、情報処理に関する色々なアイデアもてでくるわけで、おろそかにはできない。フロッピー入稿は、印刷屋の情報化のとっかかりではあるわけだ。



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