第14回 WINDOWS95|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第14回 WINDOWS95

 WINDOWS95である。私は、11月23日の午前0時に電気屋の店先に並ぶほどではないが、11月23日の朝一番に買いにいく程度のミーハーではあった。とにかく大変な騒ぎだった。どんなものでもそうだけれど、一般のニュースに侵入してくるぐらいのニュースというのは、その当事者にとっては、全生活を巻き込むような大事件である。コンピュータソフトウェアの発売が社会的関心を呼んだということでは、数年前のファミコンソフトのドラクエ販売で例があるけど、今度はOSという、言ってみれば裏方のソフトウェアである。元来使う時に意識させるようではいいOSとはいえないぐらいのものだ。それが、この騒ぎだ。WINDOWS95とは何者なのだろうか。


 正直言って、WINDOWS95を使い初めて一週間ほどになるけど、普通にアプリケーションを使っている分にはWINDOWSのそれ以前のバージョンと比べて、ほとんどかわっていない。確かに、WINDOWS最大の弱点と言われた、ファイルとアイコンが一致しないとか、フォルダ内にフォルダが作れないといった点は解消されている。ただ、これもマッキントッシュなら、数年前に実現していたことで、WINDOWS95はMACINTOSH89だなんて悪口を言われる所以である。


 しかし、この点が結局すごいといえばいえるのかもしれない。つまり、WINDOWSひいてはMSDOSの資産はそのままに、限りなくマッキントッシュになってしまったのだ。これはこれですさまじいソフトウェア技術である。ちょっとわかりにくいかもしれないが、こういうことなのだ。


 その昔、MSDOSという使いにくいパソコンOSがあった。もちろん、MSDOSが悪いと言うより、当時のパソコンは能力が低かったから、使い勝手なんて考慮する余裕がなかったのだ。パソコンを使うなんていうのは、超のつく専門家か、おたくしかいなかったのだからそれでも充分だったのである。ところが、一般の人までもがパソコンを使うようになると、このまるで魔法の呪文のようなMSDOSは嫌われた。そこで、その弱点を研究し、使いやすいコンピュータとして作られたのがマッキントッシュである。マッキントッシュはMSDOSとはまったく関係のない新しいOSであり、MSDOS用のソフトは使えない。以後マッキントッシュとMSDOSは独自の道を歩むことになる。


 MSDOS陣営はそれに対し、今までのソフトウェアと両立させながら、使い勝手をよくしたWINDOWSというしくみを考え出す。これでずいぶんましにはなったが、最初っから使い勝手を第一に開発されたマッキントッシュにはかなわない。それにパソコンの性能も昔は低かったから、MSDOSとしての基本性能と使い勝手を両立するのはなかなか至難だった。はじめWINDOWSはあまり売れなかったし、はっきりいって失敗だといわれたこともある。しかし、パソコンの性能が向上しソフトも改良されて、WINDOWSのバージョン3からは俄然売れ出し、あっというまに普及することになる。WINDOWS95はこのバージョン4にあたる。だから、WINDOWS95でいにしえのMSDOSソフトを動かせばちゃんと動く。あくまでも、昔のソフトウェア資産を継承した上で、マッキントッシュに似せたのである。これは強いわ。


 WINDOWS95も今のところ、毀誉褒貶かまびすしい。でもまあ、昔のMSDOSと、ほとんどマッキントッシュという使い勝手を両立させた努力に、とりあえず脱帽。



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