第110回 光ファイバーがやってきた|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第110回 光ファイバーがやってきた

 光ファイバーの時代というのは、いずれ来るとは聞かされていたが、こんなに早く来るとは思っていなかった。このコラムで「ADSLがやってきた」を書いたのは2001年の7月号だった。ADSLの時代は3年なかったことになる。やはりADSLは過渡期の技術だったのだなあ。


 会社の光ファイバー工事は私が知らない間に来て、知らない間にLAN網に接続されていたのでそんなに感慨はなかったのだが、ほぼ同時期にひいた自宅の光ファイバー工事で、光ファイバーを「ひく」ということの意味が今更ながらにわかった。


 まず経済的な意味合い。政府の言うIT立国、日本全国全家庭に光ファイバーというのはすさまじい投資額となることを実感した。どうやら、光ファイバーを「ひいた」家庭というのは、わたしどものご近所ではうちが一番早かったらしいのだが、これが大変な工事なのである。工事当日、家の前にNTTの車が止まっているのに、いっこうに工事がはじまらない。おかしいなと思って、家の前にでてみると、遠くの表通りでエレベーター車をつかったおおがかりな電話工事がはじまっている。つまり、表通りまでしか通っていなかった光ファイバーをさらに私の家の前にまでまず引き込む工事からやらねばならなかったようなのだ。


 自宅の光ファイバー工事がはじまってからも、工事の電話職人さんが嘆く。光ファイバーというのは、電線に比べて扱いにくいらしい。電線は銅の細い線のたばだが、光ファイバーというと、ガラスの細い線なのだ。もちろん単純なガラスではないし、ビニールで被覆されているので、すこしまげたぐらいで折れるわけではないのだが、扱いにくいのは直感的にも理解しやすい。作業がひどく面倒な上に、今までの電話線のひきこみ経路がつかえず、ほとんどあらたな経路でひき直さざるをえないらしい。


 ADSLは今までの電話線をそのまま利用できたから、電話工事という面では、拍子抜けするぐらい簡単だったが、これから光ファイバーを全国津々浦々にはりめぐらせるとなると、どれだけの工事が必要となるか見当もつかない。もちろん、大通りからの引き込み工事は、うちの町内の2件目からは必要ないだろうが、一軒一軒ひきこみ経路からのやり直しというと尋常な作業量ではない。しかも、この大変な工事をキャンペーン価格ということで、工事費は無料だった。先行投資なのだろうが、すさまじい。


そして光ファイバーのもたらすインターネット速度の飛躍的向上。これは圧倒的に大量な情報をネット上に流せることを意味する。ただ正直言って、普通のウェブページをみている段にはそれほど体感的な速さは感じなかった。威力はFTPやメイルの大きな添付ファイルを受信したときだ。1Mや2Mはもはや一瞬。カラーのDTPデータもインターネットで簡単に送れてしまう。ウェブで速さが体感できなかったのは、サーバー側の速度がついていっていないからだ。すでにADSLの時に写真などは待たされることなしに映し出されるようになっていたわけで、すくなくとも静止画像のサイトに関する限り、電送速度ではなくて、サーバー側や受信側の処理能力の方が問題なのだ。


 だが、光ファイバーを得て確実になった未来がある。動画配信が現実の物となった。ADSLの時代でも動画はあった。しかしバッファリングに時間がかかりすぎたり、画面が小さかったり、荒かったりとまだその便利さは実用性をともなってはいなかった。それが今度は本物になりそうだ。行くつく先はビデオオンデマンド。インターネットを通じて、いつでもどこでも好きな番組を買うのである。いわば、電送式レンタルビデオ。このインパクトはすごい。いずれ世の中にあるビデオソフトはすべてインターネットで売られる時代が来るだろう。そういえば、近所のレンタルビデオ屋は店をしめてしまった。


 もちろん、印刷屋は店を閉めなくてもすむよう、なにか考えなきゃね。 



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