第61回 若々旦那の逆襲|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第61回 若々旦那の逆襲

 「若々旦那」というのは、私がちょうど一年前の本欄で提唱した言葉である。一言で言えば、電算第2世代の経営者、印刷のそれもプリプレスに関してはコンピュータしか知らない世代のことだ。我々、電算第1世代を「若旦那」というなら、この世代はさらに若く「若々旦那」としか名付けようがないところから、そう呼んだ。


 どうやら、「若々旦那」たちに、「若々旦那」の名称は気にいってもらえたようだ。講演などで地方に行くと、「私『若々旦那』です」と自己紹介する若い経営者にお目にかかることが多い。これは「印刷雑誌」がよく読まれているということでもあり、この面でもめでたいですね。みなさん元気にコンピュータととりくんで、この不況下にも確たる実績をあげているようで、この不景気の中、たのもしいかぎりだ。


 「若々旦那」のうらやましいところは、仲間がいるということだ。私たちの世代では、電算写植に取り組んだとき、技術者はいても、コンピュータに夢と愛情をもっている経営者などあまりいなかった。すくなくとも経験の深い先輩はいなかった。「若々旦那」は、どうやら仲間が多そうだ。インターネットで、電子メイルで、全国をまたにかけて情報をやりとりしている。あるいは海外ともやりとりをしているのかもしれない。


 連中、コンピュータが好きだ。会社にも自宅にもコンピュータをもっている上に、モバイルコンピュータを手放さない。インターネットは自分の庭のようなものだし、コンピュータのプログラムぐらいはなんなく書く。この世代は小学校でファミコン、中学校でパソコンをさわり出しているから、コンピュータを遊び道具ぐらいにしか思っていない。


 「若々旦那」は、従来の印刷の概念など、まったく意に介していない。紙がなくなることなど、なにも恐れていない。紙の上に印字することだけが印刷だとは思っていないからだ。そして、CD-ROMやインターネットをこともなげに商品化してしまう。さあ、こんな連中が、今から10年もすると業界の中堅になってくるわけだ。


 ただ、「若々旦那」の諸君には言っておきたいのだが、業界の先輩と話が通じないからといって、自分たちで群れているだけではだめだ。それでは事業に広がりがない。私も、この年までコンピュータ一本でつっ走ってきたけれど、今になって、古い業界人の知恵というものに感服することが多くなった。紙を徹底的に利用し尽くすという、物がないときに育った世代の業界人の発想は、行くところまで行ってしまったコンピュータの使用法に新しい見方を与える。


 まず、工業組合や業界団体へ言って、話をしてみよう。「行っても話が通じない」「コンピュータを知らないことを自慢しあう老人ばかり」「電子メイルで会議の通知がこない」などなど、いいたいことは多々あろう。でも、そういって忌避していたら、せっかくの知恵が「印刷の知恵」というものが君たちの世代でとぎれてしまう。組版や印刷そのものの美しさをコンピュータを通じて実現することも、「若々旦那」の使命ではないか。わたしたちの親の世代が、活版で、手動写植で実現しようとしてきた組版の美しさというものをインターネットで実現する、オンラインジャーナルで実現する。そのことも印刷で育ててもらったものの義務ではないかな。


 そして、業界のみなさん。「若々旦那」を暖かく迎えてやってください。連中、生意気かもしれないけれど、「印刷」を愛しているのは間違いない。ちょっとそれがあなたがたの目からは「印刷」に見えないだけです。


 がんばれ「若々旦那」。君達が日本の印刷の未来を背負っているのだ。



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