第107回 人呼んでCTPの黒焼き|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第107回 人呼んでCTPの黒焼き

 アナログフィルム製版をやめ、CTP一本に絞って2ケ月、当初はアナログ機材の搬出や改装工事などもあっておちつかなかったが、ここにきて体制がおちついてきた。順調にCTPから版がはきだされて、順風満帆・・・なわけはないのだ。あいもかわらず一難さってまた一難。


 第一に、CTP一台では部数の少ないものを刷っていると、あっというまに印刷機がおいついてしまう。版を交換して次の台を刷ろうにも、CTPからの版供給が間に合わないのである。これは予測されたことではあって、RIPを追加するか、もう少し高速のCTPを導入するまではしかたがない事態だ。また金が要るなあ。


 一番問題なのは、青焼きである。コンピュータから直に刷版を出力するCTPに青焼きはない。青焼きがなくったって、普通紙のプリンタで確認しておけば問題なさそうだが、やはり写真や台割りの確認など青焼きでやりたいことはある。クライアントも青焼きでの確認を最終段階での校正としていることも多く、どうしても青焼きが要求される。


 一応、青焼きがわりとして、巨大なインクジェットプリンタが、うちの場合CTPシステムに備わっている。これでモノクロの版を出力した場合、黒いインクで打ち出されるてくるので、誰となくいいだしたのが「黒焼き」。いもりの黒焼きじゃあるまいに、あんまりいいネイミングとも思えないが、これ以外の適切な名称もなく、すっかり定着してしまった。


 この黒焼き。インクジェットプリンタなので質はそれなりである。台割りの確認程度には充分だが、写真の品質を確認しようという用途にはとても向かない。つまりは青焼きの代替には不十分である。この問題、CTPを導入した数年前からあったわけだけれど、顕在化してこなかった。なぜなら、アナログ製版を併用していた時代には、こういう青焼きのいる仕事はフィルムセッタから出力して、青焼きを作っていたからである。これがCTP一本に絞ってからは、そういうわけにはいかなくなってしまった。


 メーカーにいわせれば、こういうときはDDCPを使うべきであるということになる。しかし、モノクロにDDC(olor)Pはオーバースペックである。DDCPは機械の価格も相当にはるが、そのランニングコストをも考えると、現実的な選択ではあり得ない。


 どうもなあ、最近、なんでもカラー対応になってしまって、いざモノクロで使うとなると不便な機械が多すぎる。世の中の印刷物は全部カラーではないわけだから、もう少しモノクロの印刷ということに配慮してくれてもいいような気がするのだが。


 しようがないので、どうしても写真の品質を確認したいというクライアントには本機校正という手段で対応することにした。はっきりいって、これはあまりに本末転倒な方法だろう。CTPの青焼きがわりに本機をまわすのである。1時間1万枚刷れるような機械で5枚を印刷するのである。そのために版を焼いて、機械に組み付けて、紙を積んで刷る。我ながら書いていて情けなくなってきた。やはりDDCPをいれるべきかなあという思いにもかられる。


 でも、そうやって苦労して苦労して、DDCPを導入した頃には、クライアントが黒焼きに慣れて、そのものが必要なくなったり、レーザープリンタから質のよい写真が出力されるようになったりするんだろうな。そして導入されたDDCPが恥をかくということになる。


 コンピュータの時代になってから、この「結果として無駄な投資」というやつに、つきまとわれて、ちょっとシニカルになっている、わたし。



ページの先頭へ