電子時代の出版こそ、
中西印刷のあらたな道
出版の世界が変わろうとしています。もちろんオンラインの普及の影響です。
特に学術雑誌・学術書は従来の常識が全く通じなくなっています。
オンラインの世界はIT技術そのものであり、それはペンがワープロに、ドラフタが画像ソフトに変わるという「道具の変化」にとどまらないのです。
原稿作成から、編集、流通にいたるまで、まったく変わってしまいました。旧来の紙の書籍制作のノウハウはほとんど役にたちません。
この時代の出版のあり方を当社は常に模索し、オンラインジャーナルに見られるように先手を打って対策をしてきました。
実は中西印刷も創業期は出版社でした。
ただし江戸時代、木版の時代のことで、その後、明治時代に鉛活字による印刷技術が普及したとき、出版の道から印刷の道へと歩みを変えています。
こうした激動の時代を何度も経験した我々は、今、また次の百年に向けて脱皮しようとしています。
電子時代の出版こそ、中西印刷のあらたな道なのです。
電子書籍とEPUB、PDF
電子書籍は単に紙の本を画面で読めるようにしたものではありません
電子書籍の時代となったと言われます。しかし電子書籍と一口で言っても、人によってイメージも定義も違います。
電子書籍は本をタブレットやPCなどの画面で読むものというのは共通の認識だと思います。
一時、電子書籍という名の小型のタブレットが売られていましたが、廃れてしまいました。
普通のタブレットと区別できませんし、スマホで読む人が増えたからです。
逆に電子書籍の定義を広く考えて行くと、どんどん意味が曖昧になります。
たとえば、WEBページはどうでしょうか。今や、ありとあらゆる情報がWEB上にあふれています。
特にWEB上の百科事典Wikipediaは従来の紙の百科事典とまったく同じ役割をしています。
これは旧来の意味では書籍です。だからといってWEBページ全般、例えば、当社のホームページを電子書籍とは言わないでしょう。紙の本を電子的な画面で読めるようにしたものを電子書籍だという定義もありましたが、今や、紙の本のないボーンデジタル(生まれながらにしてデジタル)の電子書籍はいくらでもあります。
こうやって考えてみると、電子書籍には明確な定義がないことがわかります。
主流はEPUB、サイトに登録するだけで印税を得ることができる
それでも、典型的な電子書籍と言えるものはあります。
これは電子書籍プラットホームと言われる、AMAZON KINDLE、楽天Koboと言った
サイトに掲載されているものでしょう。こうしたサイトから電子書籍を買うと、本棚のように買った本が表示され、それをクリックするとPCやタブレットで読むことができます。
内容はほぼ紙の本そのままで、たとえボーンデジタルであっても、すぐに紙の本でも出版できるような体裁をしています。
こうしたサイトからの出版は実に簡単です。それぞれのサイトに登録するだけで出版でき印税を得ることができます。
こうした電子書籍サイトではEPUBという形式でサイトに掲載することを要求されます。
EPUBは電子書籍専用のファイル形式で、リフロー型の出版に向いています。
EPUBファイル作成については少し専門的な知識が要りますので、当社にご用命ください。
PDFでは、電子書籍として
流通させる意味がない
PDFを電子書籍にしたいと言う希望をよく聞きます。残念ながら、現在PDFを電子書籍にできるサイトは限られます。
これは課金の問題なのです。PDFでも課金は不可能ではないのですが、PDFはその性質上コピーが容易です。
従って課金が前提であるものにPDFは向きません。
よく「無料でもいいので手持ちのPDFをそのまま電子書籍として流通させたい」という依頼を聞きますが、それならば、ご自分のサイトや学会のページなどにPDFを載せていただければいいだけのことで、電子書籍として流通の意味をもちません。
独自の出版形式に進化していくオンラインジャーナル
結局、電子書籍はいくら定義しようとしても無理です。
つまり書籍とは紙の本のためにできた概念であって、オンラインでは関係ないのです。
いまのところ電子的な媒体に紙の本のイメージをなぞらえることで電子書籍といっていますが、これでは紙の書籍の偽物でしかありません。
今後は、オンラインジャーナルで展開しているようなまったく独自の出版形式へと進化していくと考えられます。
おそらくコンテンツのあり方それ自体、たとえば文学のありようなども変わっていくと考えられます。
オープンアクセス時代の出版モデル
オンラインジャーナルの有用性が再認識される
2020年の新型コロナウィルス騒動で日本のIT化が一気に進みました。例えばテレワークです。
今まで、テレワークなど機能するわけがないと思われていましたが、意外にどこの社でも対応できてしまいました。Zoom等によるWEB会議も一気に普及しました。
出版界では、図書館が閉館したため、研究者はオンラインしか参照することが出来ず、オンラインジャーナルの 有用性が再認識されたということがあります。
もうオンラインジャーナル化はどんな雑誌でも必須となっています。
また初めてオンラインジャーナルや電子書籍に接した方も多かったようです。
実際使ってみて、その便利さに目覚めたという人をよく聞きます。
オープンアクセスは出版社のビジネスを覆す
さらに、オープンアクセスという新たな出版形態はオンラインが前提であり、出版社のビジネスを根本から覆してしまいます。
今まで出版社は本や雑誌という「物」を売って対価を得るというビジネスモデルでした。
学会でも、会費の対価として学会誌を配布するということで、出版社のビジネスモデルを踏襲しています。
ところがオープンアクセスは電子学術雑誌をただで誰でも読めるようにしようという運動ですから、
ビジネスモデルがまったく違います。作成費用は著者からの掲載料や図書館からの補助金を使います。
今までの出版というのは、言わばお金をとって情報を売るという商売でした。
著者から原料としての原稿や写真の提供をうけ、加工して商品化し、書店におろす。
ここで本という「物」を供給することで情報提供をマネタイズしていました。
電子書籍は、この最後の商品化の部分が紙から電子になっています。逆に言えば、それだけなのです。
つまり情報加工とそのマネタイズという意味では、本のビジネスモデルをそのまま水平移動して電子書籍と言っているだけなのです。
オープンアクセスのビジネスモデルはこれを完全に逆転していることがわかります。逆転でさえないかもしれません。垂直に移動しているといえるのではないでしょうか。
元々、ネットではブログというかたちで自分で書いて自分でただで公表するという形態が一般的でした。
それにアフィリエイト広告等をつけてマネタイズするということも行われてきています。
また研究者は近年、オンラインジャーナルに投稿するよりも前にプレプリントサーバーで論文を発表してしまうということや、
TwitterなどのSNSで最新研究成果を発表することも増えてきています。
これらの新しい形態での発表は論文ではないとか、アカデミズムの範疇ではないという意見もありますが、
もう若い先生方は何も気にしていません。結果がすべてです。もう昔の出版は完全に終わってしまっているのです。
オープンアクセスを前提として再構築することで、新しい出版産業が生まれる
今後、出版モデルは解体され、オープンアクセスを前提として再構築することで、新しい出版産業ができるのではないでしょうか。
もちろん原稿を直にホームページに載せるだけでは出版たりえません。
出版とするには編集が必要ですし、リンクや構造化といったデジタル処理が要ります。
また、原稿はオンライン原稿投稿システムなどを使って集めるようになるでしょう。
編集は一連のIT作業の中に組み込まれていくでしょう。