第115回 drupaにて|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第115回 drupaにて

Drupaに行ってまいりました。このコラムが載る頃には、もう一通り報告も出ているだろう。なんせ、まったく偶然にdrupaの会場で本誌の編集者にあってしまうぐらいだもの。それ以外にも、日本の印刷関係者はこぞってドイツに行っていたのではないかと思うぐらい知り合いによくあった。まあというわけで、正式報告はそちらに譲るとして若旦那印象記。


drupaのご高名はかねて伺っていたが、実は私は今まで仕事のめぐりあわせが悪く、行くのは今回がはじめてなのである。いやあ。確かに聞きしにまさるとはこのことである。ジュッセルドルフのメッセの広さは、行った人からは聞かされ続けてきたので、それほど驚かなかったが、とにかくあの人の多さと、その醸し出す熱気には圧倒された。


世界中から印刷機材業者が集まっているというその一言で、すべてが語られている。つまりは日本では聞いたことも見たこともない印刷機材メーカーの展示が多いのである。中でも中国のブースが目立った。洗練されない機械に粗末なブース。それでも熱心な展示員というところだろうか。とにかく安さを武器にヨーロッパ市場に浸透を計っているとみた。日本が世界にではじめたころもあんな感じだったのかもしれない。それにしても、中国人は会場をでてもあちこちでめだった。中国の経済成長をいまさらながら思い知った。


展示に関しては、印刷関係・製版関係では、もうやることがないのかなという感じである。自動化も高速化もいきつくところまで行ってしまって、どちらかといえば、JDF(Job Difinition Format)のような工程間の連携をつかさどるシステムが前面にでていた。


面白いのは、私が興味があるせいでもあるからなのだが、オンデマンド印刷システムである。この領域は、高速大量一点張りできた印刷が、少部数、個別対応に目を向けたということである。特に、一枚一枚、顧客に応じて刷るものを変えるone to oneは印刷の概念を根本的にかえてしまった。同じ物を大量に配るよりも、客筋の好みを細かく分析して、その人の好みに応じた個別の宣伝パンフレットを提供するという印刷技術である。こうしたシステムには、オフセット印刷機械の延長上にあるDI(Direct Imaging)系のオンデマンド印刷機では無理で、DI系の展示は減っていた。ただ、こうしたone to oneを支える電子写真方式のオンデマンド機の品質、特にカラーの品質は悪く、オフセットの代替とするには無理があると言われていた。


 今回、各社のブースに出ていたone to one可能な電子写真系の印刷は限りなくオフセットの品質に近づいていた。紙の対応も厚紙から薄紙まで可能となり、進化が著しい。それに応じて製本機器もオンデマンド対応の物が散見された。これまで、オフセット印刷を前提として作られた製本機器ではオンデマンドの特質を充分に発揮するとは言い難かったのが、オンデマンド専用の製本機の登場であらたな印刷製品を可能としそうだ。


 これは活版→オフセットと進んできた印刷技術がさらに→電子写真(あるいはインクジェット)へと進化する節目だったのかもしれない。今のDrupaで、すくなくとも活版の展示を見ることはない。しかし、過去、私の祖父や父がDrupaに行った頃は、活版とオフセットは並立していたわけで、今から思えば時代の進化とはそういうものだ。ある日突然かわるわけではないが、徐々にいれかわっていく。


 最後に、海外の展示会に行くには英語をもっと磨かなければどうにもならないことを今更ながら痛感した。今回、ドイツというので大学の第二外国語だったドイツ語をはりきって勉強していったのだが、中途半端なドイツ語などなんの役にもたたない。どこでも英語が完全に通じる。機材に関する複雑な質問を英会話でこなせなければ、つっこんだ説明を聞けない。若い世代の日本の印刷人が自在に英語をあやつるのがうらやましかった。



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