第57回 ウィンドウズDTP|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第57回 ウィンドウズDTP

 うちの会社はことマッキントッシュDTPに関しては後発もいいところだ。実際、マッキントッシュDTPで本格的に組版の仕事をこなすようになって、2年ぐらいでしかない。私がここに「コンピュータ奮闘記」なんてコラムを書いているので、電算を駆使する先端の印刷会社と誤解されているが、マッキントッシュDTPでは新参者と言っていい。


 電算写植では、ちょっとはがんばったという自負はある。電算写植でも後発ではあったのだが、活版の職人さんたちの知恵と技能を電算写植に注入し、プログラミング技術などにも磨きをかけて、その面ではちょっとは名の知れた会社にはなった。


 この自信が災いした。パソコンやWYSIWYGなどというものをついつい軽視してしまった。こまかいコマンドライン入力を使って、芸術のようにコーディングを重ねていく電算写植こそが、活版の技を伝承できる唯一無二の技法だと勝手に思いこんでいた。むろん時を経るに従って、電算写植でも文字だけでなく画像をとりこむことが必要になってマッキントッシュを使わざるをえなくなっていた。それでも、ごく最近まで、電算写植こそが印刷の王道。DTPは二流という意識は消えることはなかった。


 が、こんな考え方に意味がないのはDTPを扱っているみなさんなら、先刻ご承知のことと思う。時代は一気にマッキントッシュDTP一色である。工場内にずらりと並んだマッキントッシュは今の印刷会社の象徴だ。マッキントッシュをプラットフォームとして膨大なDTPのノウハウが蓄積された。これは一朝一夕に失われはしないし、当分印刷業界ではマッキントッシュが使われるだろう。だが、パソコンという市場全体で見れば、マッキントッシュはすでにマイナーである。大勢はウィンドウズになっている。


 ウィンドウズのメリットはなんといっても、ハードの性能向上と安さである。これはもう驚異以外のなにものでもなく、2年前の最上級スペックのマシンと同じ性能の物が、今では初心者入門用機として10万円以下で売られている。中には、「ただ」というものさえある。逆に価格を言わなければ機械の選択肢は実に多い。ありとあらゆる機能、スペックのものがある。


 それに加えて、ウィンドウズの魅力はソフトの多様なことにもある。確かに、DTPソフトではマッキントッシュに一日の長があるが、周辺ソフトの多さではマッキントッシュの比ではない。このことは、インターネットやCD-ROMなどの印刷のマルチメディア展開を考えたとき武器になる物が多いことを意味する。しかも、一般市場での普及率が高いからフロッピーやMOではいってくる原稿は圧倒的にウィンドウズが多い。ウィンドウズDTPだとこれらのデータがそのまま印刷システムの中に組み込んでいけるのだから、生産性の面でも有利だ。


 マッキントッシュで出遅れた我が社としてはウィンドウズに夢を託そうと思う。


 誤解しないでいただきたいが、私はDTPプラットフォームがマッキントッシュからウィンドウズへとってかわると言っているのではない。マッキントッシュにはDTPでの実績とともに、カラーハンドリングや画像処理での絶対的な強みがある。それを極めるというのもひとつのあり方であると思う。うちでも、マッキントッシュ部門そのものは、まだまだ強化することを考えている。


 ただ、成熟しつつあるDTP市場にマッキントッシュという他社と同じ角度から切り込んでも大きな成功は望めない。その意味でウィンドウズに賭けようと言うのだ。今、こんどこそこれで天下とってやるという覚悟で、ウィンドウズDTPを導入しはじめた。なにせ1台10万円。電算写植のことを思えば夢のように安い。ウィンドウズマシンの大増殖がはじまった。



ページの先頭へ