第63回 カラープリンタ年賀状|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第63回 カラープリンタ年賀状

 読者にとってはもうすでに季節はずれだろうけれど、書いているのは1月3日なので、年賀状の話題でご勘弁ください。


 職業柄か、友人、親戚などからくる年賀状も内容よりも作り方に興味がいってしまう。最近は本当にいろいろな作り方がされている。純粋に手書きというのはまずなくなった。一見毛筆だと思ってよく見ると、本人が書いたもののコピーだったりする。写真を年賀状に加工する年賀プリントは根強い人気があるようで、赤ちゃんが版面いっぱいに写っているなんてのは、例外なくこれだ。昔よく見たイモ版や一斉を風靡したプリントごっこといった手作り年賀状は姿を消している。


 やはり、通常の印刷年賀状が一番多い。さすがに活版は一枚もないが、オフセットかオンデマンドで墨一色というのが定番だ。それにカラー写真のシールを貼るというのが、今年の流行とみた。プリクラの影響かもしれないが、シールだと全面を写真にする年賀プリントよりはるかに安上がりだし、一部分といえどカラー写真になるので、訴求力も高い。 実は私もこのシール形式を愛用してきた。暮れにハガキ作成ソフトで作った原稿をプリンタドライバで4丁付けにしてモノクロのオンデマンド印刷機で刷っておく。それに毛筆ソフトで宛名書きをしてから、カラー写真のシールを貼るというのが、ここ何年かの私の年賀状作法だった。カラー印刷なんぞで年賀状を作ると時間はかかるし、値段も高いから、この形式はけっこう気に入っている。そろそろオンデマンドカラーという選択肢もありうるかなというところだろうか。


 しかし、なんといっても、今年のヒットはカラープリンタ年賀状だ。ここ数年、カラープリンタの年賀状というのは増えていたが、あまりきれいとはいえなかった。ことに、カラー写真の印刷はいかにも、カラープリンタでございという、荒い品質の物しかなかった。これが、今年は馬鹿にきれいになっている。やはりカラープリンタ自体の品質が上がったし、カラープリンタ用の専用紙が出回るようになったからのようだ。郵政省発売の年賀状にもカラープリンタ用の専用紙を使った物があるのは御存知の通り。


 私も、年末に用意した年賀状が新年早々に切れて、返事用にとカラープリンタと専用紙で作ってみたら、これがきれいなのだ。小さな写真だと写真品質はもうカラーオフセットや写真シールとまったく遜色がない。しかも、自宅のカラープリンタを使えば、年賀状が足りなくなれば、刷ればいいんだから便利だ。だいたい年賀状なんて、出したところからは来なくて、出してないところから来る。だからと、返事用に多めに刷って、とっておくと余る。カラープリンタを使えばこの問題がまったくない。必要ならば刷り増せばいいだけのことだ。出す相手によって、何パターンか作っておいて使い分けるというような技も使える。今年初めて、返事専用の年賀状というのを作ってみた。「早々の賀状ありがとうございました」が、あらかじめ刷り込んであるのだ。


 あまりの便利さに、来年からは、印刷なんてやめるかなと印刷屋にあるまじきことまで考えた。ただまあ、写真をきれいにするためにスーパーファインモードなんて使うと。時間がかかってしかたがない。200枚、300枚という単位になるとあまり現実的ではないのも確かで、何年かは印刷と併用の時代が続きそうではある。いずれにしても、印刷屋の看板仕事のひとつだった年賀状も、近い将来、印刷屋の仕事ではなくなりそうだ。未来の印刷と言われるオンデマンドカラーといったって、休み中に家で刷り増したり、数パターンを使い分けるほどの手軽さはないのだから。



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