2006年のスタートは告白からはじまる若旦那なのである。実は、インターネット普及論、電子印刷普及論の過激派をもって認ずる、私、中西秀彦はオフセット印刷機の更新を決断したのだった。と大げさにふりかぶるまでもなく、印刷屋なのだから、機械が古くなれば更新するのは当たり前といえば当たり前だ。
しかし時代は印刷にあまりに逆風。何度も書いてきた様にインターネット上のオンラインジャーナルの普及で、紙の印刷物はどんどん廃止になってきているし、廃止にならないまでも部数の減少はさけられない。かたや、コピー機やそれの発展型である電子印刷機の性能向上は著しく、500部程度までの印刷物はますますこうした領域に移っている。どう考えても、印刷の需要は減っていくのは間違いがない。コンピュータと違って印刷機は10年は使い続けることになる。今はよくても、10年後、この機械は生産に貢献しうるのだろうかということをつい考えてしまうのだ。
といって、各印刷機メーカーがオフセット枚葉機に見切りをつけているわけでは決してない。むしろ、ますます印刷機の性能を向上させ、オフセット印刷への選択と集中をはかっているかのように見える。印刷機メーカーの決断もこれからの10年、20年、まだオフセット印刷が滅びることはないし、ある程度の需要はみこめると確信があるから故といえる。おそらく、それもわたしなんかより、10倍、100倍ものマーケティングリサーチをした結果だろう。
結局、我が社がオフセット印刷機を更新することにした最大の理由は、印刷機メーカーが強気でいられるのと同じ理由、オフセット印刷の品質と速度は現在のどんな印刷方式やインターネットより勝っているし、それは一朝一夕にかわりそうもないということにつきる。
もうひとつ重要な要素は、オフセット印刷機そのものがデジタル化して、デジタルでないが故に不可能とされてきた数々の機能を兼ね備えるようになってきている点だ。オフセット印刷機そのものがCIP3 CIP4などデジタル製版技術と直接・間接に結びついていき、数値の制御というデジタル最大の魅力が印刷機において実現しているからだ。すこし以前のように、デジタルプリプレスと親和するには電子印刷機(オンデマンド印刷機)しかないというのとは様変わりだ。プリプレスから始まったデジタル技術の浸透はついにプレスの末端にまで到達した。
印刷機がデジタル技術と統合した結果、むしろ、オフセット印刷の得失がより明確に立ち現れてきた。速報性、検索性についてはインターネットが優位とするなら、画像の正確性は印刷の存在意義となる。インターネットでは、見る人の見るディスプレイ毎に違う画像が呈示されるわけだが、印刷は最初の一枚と最後の一枚は完全に一致している。画像の同一性に保証があることになる。オフセット印刷がデジタルの土俵にあがることで、その特長が明確になるということだ。今、オンラインジャーナルでも、紙版の完全廃止に踏み切るのは少数で、オンラインジャーナルと紙の印刷版をひとつのソースから作り込む技が求められる。だからこそ、印刷は印刷の強みを発揮していかねばならない。
電子印刷が少部数やバリアブルなどさまざまな新しい使い方を開拓していく中で、オフセット印刷は小技が効かない分、愚直に品質を追求することでその地位を確保していくといっていいのかもしれない。たぶんこれからの10年、インターネットも伸びる、電子印刷も伸びる、だが、完成の域に達しつつあるオフセット印刷は、10年程度ではそう簡単には駆逐されないだろう。
と、まあ、印刷機の新設でも増設でもなく更新で、これだけのゴタクを並べなければならないのが問題と言えば問題かな。