第119回 ノートパソコンの進化|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第119回 ノートパソコンの進化

119回です。次回はいよいよ10年の節目の120回 ノートパソコンを3年ぶりに買い換えた。ノートパソコンという奴、デスクトップと違って筐体と重さに制限があるだけ、技術の進歩を実感しやすい。進歩と言っても、もはや速度とかHD容量などは問題にもならない。こうした基本スペックは3年前ですでに十二分の性能だった。サブマシンとしてのノートパソコンならHDは20GBもあれば使い切れないし、画像をいじくり回さない限り、速度もそんなに速くなくていい。メイルをチェックし、文書を書き、プレゼンテーションソフトを操る用途には、前のマシンでもそれほど不自由はしていなかった。


 では何が一番変わったか、前のノートパソコンなら大きさの制約から外付けにせざるをえなかったものが、内蔵になった。たとえば、LAN。LANのソケットがそのままついている。インターネットにつなぐにはLANケーブルをそのままつないでしまえばいい。LANカードも、LANケーブルアダプタもいらない。つまり本体だけで、インターネットにブロードバンドでつながる。無線LANまで標準装備だ。それからCD-ROMドライブ。前の機械の時は、必要なときにだけ外付けのドライブをつないでいた。ソフトをインストールするたびにCD-ROMを接続するのは結構めんどうだったし、出張にはいちいち外付けドライブを持ち歩くわけにもいかなかった。これが、今度のマシンでは内蔵なのだ。しかもDVDなのである。DVDの映画もそのまま見ることができる。いわば、ノートパソコンでありつつ、ポータブルDVDプレイヤーとしても使えるということだ。


 結果としてノートパソコンはもはやパソコンという範疇にはおさまらず、あらゆる情報の携帯出力装置となったと言っていいのではないか。夏に家族でドライブ旅行をしたとき、子供はうしろの座席で、このノートパソコンのDVDでアニメ映画を夢中でみていた。DVDにあきれば当然ゲーム機にもなる。以前でも無理すればそういう使い方ができなくもなかったが、前述のように付属品がたっぷり必要で旅行に持ち歩くには不便だった。惜しむらくはテレビチューナーは内蔵されていないので、テレビを見るには別途アダプターが必要になる。でも、これも内蔵されるのは時間の問題だろう。


 そして、DVD版の百科事典と日本地図のソフトをHDにインストールした。こうなると動く百科事典と詳細日本地図でもある。DVD版の百科事典であれば動画も動くし、音も鳴る。


 つまりは、ノートパソコンという名のこの小さな機械はインターネット端末であり、ワープロであり、DVDプレイヤーであり、ゲーム機であり、百科事典であり、詳細地図でもあるということになる。これが、1キロちょっとB5の筐体におさまる。たぶん数年先にはこれらの機能が携帯電話へと圧縮されることになるだろう。


 新しいノートパソコンを買って、私の旅の習慣がかわった。今まで、新幹線の中では本を読んできた。私が特に読書家だからというわけではないが、新幹線の中では印刷物を読む以外、他にやることがない。私だけではない。新幹線の中で人のやることは読書か居眠りというのは車内で観察すればすぐわかる。それが駅でDVDを買って、ノートパソコンで見るようになってしまった。東京-京都間2時間とちょっと、映画を1本みるのにあまりに適切。もちろん、電池は東京-京都往復したって充分もつ。


 印刷屋の私にして、そうなのだから、情報媒体としての印刷物の地位がさらに低下することは論をまたない。こういう時代に、どうやって印刷屋が生き延びるか、10年このことを問い続けてきて第119回。来月はいよいよ連載10年を迎える。



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