第136回 サーバーダウンの破壊力|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第136回 サーバーダウンの破壊力

 サーバーがダウンした。久しぶりだ。画像、線画、文字にDTPファイル、PDFなどなどがサーバーを介して会社中を行き交うようになって久しい。最近ではDTP現場に加えて、会社の工程管理システムから、営業の電子メイルまで全部サーバーにのってしまって、それぞれを組み合わせて使うという時代になっている。便利なことこの上ないのだが、それがダウンするとこれはもう大変な事になる。今や印刷会社では、ほとんどの職場でコンピュータを使っているから、サーバーがとまるとやる仕事がそもそもなくなってしまう。 もちろん、今までもサーバーダウンによる会社システムの壊滅には何度も悩まされてきたわけで、徹底的に安全措置は講じてあった。サーバーのバックアップからレイド構築など、本当にデータはありとあらゆるところで二重三重に保存できるようにしてある。本来これだけ安全措置を講じるからサーバーでファイルを管理する方が有利なのであって、最近は、クライアント側のパソコンにデータを保存する方がこわいぐらい、サーバーを信頼しきっていた。機械自体の信頼性も高まっており、ここ2・3年はサーバーダウンという事態はほとんどなくなっていた。今回のダウンの原因は、新しいオフセット印刷機をいれるために、会社中の電気を一旦おとしたからだった。印刷機械を使う限り、電気設備の改変が必要だからこういう事も避けられない。


 ダウンした当初は落ち着いたものだった。つけっぱなしが前提のサーバーの電源を落とせばそんなこともあるだろうが、うまく対処すれば1・2時間で回復とたかをくくっていたのだ。しかし、事態は悪化する一方だった。確かにデータは保存されていた。二重にも三重にも安全策が講じてあるから、それは絶対安全なのだ。ところが、サーバーが回復してもデータにアクセスできなくなってしまったのだった。


 ドメインコントローラがやられたということらしい。それが何を意味するかはともかく、現実にデータにアクセスできなくなってしまった。いったん、初期状態に戻すしかないという報告で戻したのだが、これがかえって混乱を招いた。クライアントを復活させようとしても、今度は、プライバシー保護対策のためにめちゃくちゃに厳格にしてあるセキュリティシステムが裏目に出る。簡単にはサーバーにアクセスさせてもらえないのである。おいおい、いつも慣れ親しんだ私じゃないかとクライアントパソコンに語りかけても、がんとして、サーバーは言うことをきかない。杓子定規にいくつものパスワードを要求してくる。セキュリティ上はそれぐらいでないと困るのだが、復活に時間がかかってしかたがない。急ぎのところから復活させることにしようと、優先順位を決めようとするのだが、社員それぞれみんな急ぎの仕事を抱えていると言い出して、収拾がとれない。


 そしてやっと回復はしたものの、初期状態に戻ったクライアントパソコンは、画面の構成、フォントの設定、インターネットエクスプローラのお気に入りまで綺麗さっぱり忘れてくれている。カナ漢字変換のユーザー辞書までふっとんでいたのには恐れ入った。 結局、それやこれやで全社が復活するのに一週間かかってしまったのだった。今更ながら、継ぎ足して継ぎ足して増殖していくクライアントサーバーシステムが、全体としてどれだけ複雑で巨大なシステムになっていたかを思い知らされた。


 さてこの大騒ぎの元になった、新しいオフセット印刷機はその間も順調にセッティングが進んでいた。もう今や、コンピュータシステムと関係ないのは印刷機械だけだなあと思っていたら、今日の調整はCIP3だそうだ。つまりは、印刷機械もサーバーシステムにつながるということなのだ。その意味するところは次のサーバーダウンはいよいよ全社全機械ストップ・・・・・ぞっとした。ただちに、ドメインコントローラとやらの二重化を厳命したことは言うまでもない。



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