第123回 セキュリティの煩雑|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第123回 セキュリティの煩雑

 自宅のパソコンを更新した。話題の水冷コンピュータである。最初のパソコンを初ボーナスで買ってから22年、実に8台目。ノートパソコンや、マッキントッシュを併用したりした時期もあったので、家で使ったパソコンはのべ15台になる。最近では、毎年デスクトップか、ノートパソコンを買い続けている勘定だ。古くなった機械は家内や子供に下げ渡していくので、家にはパソコンが増え続けている。小学生も含めた4人家族に5台。 こう家中にパソコンが増えてくると、家庭内LANは必須。このコラムでも書いたように、すでに家庭内LANは数年前にひいてあるので、家内も子供もコンピュータ同士は自由にデータが読み取れるものと信じて疑っていない。もちろんインターネットにはパソコンの電源をいれるだけで自動的につながるものと思いこんでいる。ダイヤルアップは歴史の彼方だ。逆に、新しくてもLANにもインターネットにもつながっていないパソコンには子供ですら見向きもしない。


 その昔(といっても数年前)、LANの設定は難しかったが、最近はそれほど苦労はしなくなっていた。とにかくケーブルでつなぎさえすればどんどん接続されていく。OSが進化してLANの設定が簡単になっていたのだ。これは家庭にLANが浸透していくことと一体だろう。家庭内LANをするのにいちいち電話業者を頼んだり、システム担当者をよびつけるわけにはいかない。専門性が必要ないから家電なのである。なんの知識もなくても、プラグをさしこむだけでどんどんつながっていく、そうでなければ家庭には売れない。我が家はLANを導入するのが早かった分苦労したが、そのあとは一気に簡単になっていった。ところがである。今度の水冷コンピュータにはとんでもなく苦労させられた。いや水冷のせいではない。新しいOSが原因なのだ。


 つながらないのである。古いコンピュータのデータを新しい水冷コンピュータからは読めるが、新しいコンピュータのデータを古いコンピュータから読めないといった現象が頻発する。マニュアルとくびっぴき(といっても冊子体ではなく画面)で調べてようやっとわかった。セキュリティ対策のせいなのだ。簡単にコンピュータの中のデータが盗まれたり、読まれたりしないように、デフォルトのセキュリティ対策が格段に厳しくなっているのである。最近のOSの特徴、セキュリティ対策の強化というやつだ。家庭内LANになにもそこまでと思われるようなセキュリティ対策が施してある。


セキュリティレベルを下げることもできるのだが、いちいち「システムが脆弱になるおそれがあるのでセキュリティレベルを下げることは推奨しない」と表示されたら、さげるには勇気がいる。しかしセキュリティをある程度犠牲にしないと、今までのように気軽に家中でデータをやりとりできない。なやむところだが、つなげなくてはしようがない。無理矢理にでも設定を変えてしまった。これで安全なのかどうかは素人には正直わからない。だったらなんのためのセキュリティ対策だといいたくなる。本気でこんなややこしいものを家庭内で使わせようと言うのだろうか。


 セキュリティと利便性は二律背反とよくいわれる。ここで、セキュリティなどなにも考えていない古き良きコンピュータを懐かしむつもりは毛頭ないが、システムの脆弱性とその対策について、あまりに過剰反応であるような気もする。家庭で使うパソコンのデフォルトの安全対策をここまで厳格にする必要があるのだろうか。


 あるんだろうな。やっぱり。安全対策がしてなくて、システムが破られたら、文句を言われるのはメーカーだろうしな。


 案外、こういうところから紙の本が見直されたりするかもしれない。



ページの先頭へ