第66回 eコマースがかまびすしい|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第66回 eコマースがかまびすしい

 エレクトロニクスコマース。日本語で言うと電子商取引というやつだ。インターネットなどの電子的な手段を通じて、商品の受発注から決済までをやってしまうというもので、旧来のビジネスの枠組みを大きくかえると期待されている。IBMをはじめなだたるコンピュータ関連企業が、盛んにテレビでコマーシャルをうっているのでご存知の向きも多いだろう。なにせ、インターネットのホームページに商品情報を掲載しておくだけで、24時間世界中から注文がとびこんでくる。店舗がいらないし、営業マンもいらない。商品の売買はコンピュータ同士で勝手にやってくれる。しかも既存の通信販売と違って、カタログを金かけて作る必要もない!


 カタログを作らなくてもいいということになると、カタログを刷っている印刷屋にとってはいいことばかりとはいえないeコマースだけれど、どうやら21世紀の流通をかえるのはまちがいなさそうだ。今でも、商品によっては、大きな市場を形成しつつある。


 印刷屋にもeコマースをめざした動きがみられるようになってきた。多いのは名刺の受注システムである。ホームページの上で、住所や名前を入力すると、名刺を作って送ってくれるというようなシステムである。これを拡大すれば年賀状なんかもできそうだ。


 うちでも、ネット上で組み版ソフトTeXに限ったオンデマンド印刷サービスをはじめた。「TeXで書かれていれば、それを添付ファイルで送ってもらうだけで、オンデマンド印刷してさしあげましょう」というホームページを作って受注をはかっているのだ。元々少部数のものに限られるオンデマンド印刷なので、一件一件の金額はさほど大きくならないが、数が集まれば結構な金額になる。営業は一回もクライアントのところに行く必要がないから、営業費はゼロなわけで、すくなくとも、利益率は高いはずだ。


 それほど宣伝もしていないが、年度末にはかなりの注文がまいこんできた。さすがeコマース。発注者は全国にちらばっていた。京都の印刷屋に東北や九州のクライアントからの仕事がとびこんでくる。距離はまったく関係ない。全世界からだって注文がくることもあながち誇張とは言えない。英語で書いてあるページを見てロサンゼルスから問い合わせがあったこともあるくらいなのだ。


 TeXに限らず、ワードや一太郎でも入稿可能にすればもっと仕事は増えるだろうとは思うが、これは見送った。そこが、こういった不特定多数相手の商売のむずかしいところだ。どんなファイルが来るかわからないのだ。いわゆるトホホファイルの恐怖である。TeXだったら、それを使えるクライアントというのはある程度コンピュータに詳しいのは確実なわけで、ファイルも整っていると期待できる。結局、市場は限定されるが、TeXというソフトに限定することで、無限の多様性への対応という危険を回避したわけだ。


 今のところ、eコマースと呼べるような物ではないかもしれないが、ホームページを工夫したり、検索エンジンに載せてもらったりすると、ダイレクトに反応があって、受注に結びつくのが面白い。最近、ホームページ上に自動見積り機能も付け加えた。もう一歩いけば、コンピュータのみによる完全eコマース印刷受注も可能だろう。いずれは、コンピュータが勝手に受注し、自動的にオンデマンド機を動かし印刷製本、宛名ラベルをつけて発送、お金だけが電子マネーで口座にたまっていくというのも、あながち夢ではないのかもしれない。コンピュータは夢だったことをどんどん現実の物にしてくれてきたのだから。でも、「口座にお金だけたまっていく」というのだけは実現したことがないなあ。



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