第4回 漢字コードはどっちへ|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第4回 漢字コードはどっちへ

 フロッピー入稿をやっていて困るのは、先方がもってきた内容と、こちらで出力した内容が違う場合だ。これは、ワープロの文字コードと電算写植機の文字コードが、異なっていることに起因する場合がほとんどだ。特に、罫線や約物にこの傾向が強い。○付き数字なんていうのは、割と重要な箇所で使っているのに変換してみると全然違う字に化けていたりする。


 文字に関して、我々がフロッピーをまがりなりにも変換できるのは、JISコードのおかげである。某社のようにまったくJISと違う漢字コード体系を振り回しているところもあるけれど、これにしたって、JISとの互換テーブルは欠かせない。共通コード、すなわちJapan Industrial Standard(日本工業規格)があればこそ、どこで誰がつくっても文字の互換がきく。ところが、それでも文字が化ける場合がある。ひとつは、JISに決められた以外の漢字を各社が外字登録している場合である。先々回ワープロやパソコンフロッピーフォーマットの無法状態を問題にしたが、この勝手きままな、文字拡張もどうにかして欲しいものだ。メーカーそれぞれは親切のつもりでやっているのだろうが、文字が化けないように変換するのははなはだ緊張を強いられる。しかし、これはメーカーが違うのだから、それぞれの企業の戦略も絡んでまあ許せる。


 もうひとつ許せないのはかのJISコードの二転三転問題である。


 この問題は、一度でも仕事で直面したりすると恨み骨髄になって、絶対忘れない。知っている人の間ではあまりに有名な話である。ところが知らない人はまったく知らない。これは、私の本でも書いたし、講演にでたりしたら、言いまくっているのだが、ここでも書いてしまう。こうだ。


「JISコードは1種類ではない。変化している」


 共通コードというやつは、3021を「亜」ときめたら、みんなはそれから3021というコードが来たら「亜」を出そうということなんだけど、この対応関係が時代とともに変わっちゃってるのだ。もちろんほとんどの人が知らないわけで、そんなに過激な物ではない。象徴的なのは、「鴬」と「鶯」のような例である。1978年の第1回目のJIS設定(JIS78)では、「鶯」が頻度の高い字にあてられる第一水準で、「鴬」が頻度の低い第2水準なのに、1983年の第2回目のJIS設定(JIS83)では「鴬」が第一「鶯」が第二にコードを入れ替えている。こういった例が22種類ある。他に字体の変更もかなりの数にのぼる。


 JIS83のできた1983年といえば、もはや10年以上前で、今ではだいたいJIS83に統一されてきたが、日本のパソコン標準機NECの9801が初期ロットとの互換を保つためにJIS83発表後も長くJIS78を採用し続けたせいで、このコード混在はいまだに続いている。それどころか、1990年の補助漢字制定時点でも、またすこし変化してるし、JIS95というものも計画されているらしい。JIS95ではいくつかの漢字をJIS78に戻すとかいう話まである。モウドウナルカシランゼ。


 ことは漢字だ。フロッピーの文字化けの責任を、JISをいじった通産省になすりつけたとしても、クライアントが納得してくれるわけでもない。印刷屋があやまるしかない。なんか理不尽な気がするのは私だけか。



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