第127回 CTPの選択|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第127回 CTPの選択

 CTPも導入して6年近くがたつ。3年前にフルデジタル化を達成し、フィルム製版をやめてからはCTPだけが我が社の印刷製版法である。こうなると、全社の製版需要がCTPに集中するわけで、当初から容量については危惧があった。実際、版数の多い仕事をこなしている時は、印刷がCTPにおいついてしまう。印刷部の職員が製版部にやってきて、刷版がでるのを待って奪い去るように持っていく。そんな光景は日常茶飯である。


 これはさすがにまずい。


 CTPの増設もしくは更新の検討をはじめたところ、どこから聞きつけるのか、CTPのメーカーが次から次へと営業に訪れてくる。カタログスペックを見る限りでは、性能は6年前にくらべて格段に向上している。機構的には従来からのYAGレーザーからバイオレットレーザーがへと主役が交代し、感材も、フォトポリマーは廃れたが、サーマルや銀塩などにさまざまな物が登場してきている。各社ともラインアップに様々な機構の機械をとり揃えて、よりどりみどりである。ただ、選択肢が多いということは裏返すと、一長一短というところで、決定的な物がない。


 ここは、自社の仕事内容を分析して、冷静に判断すべきだろうが、A社はB社の製品を批判し、B社はC社の製品をけなし、C社はA社の製品をくさす・・・という永久連鎖で、選べば選ぶほど優劣がわからなくなる。FMスクリーニングもA社は賞賛し、B社は実用的でないといい、C社は通常網点とFMスクリーニングの特長を併せ持った新製品があるという。つまるところ、CTPは機械それ自体に各社とも、もうたいした違いはない。それぞれご自慢の機構があるにしてもだ。もちろん、印刷機械なんてそういう意味ではもっと性能差がすくないことになる。物理的な機構である限り、決定的といえるシステムはそうそう出てくるわけではない。


 むしろRIPの性能差の方が大きいようだ。さらに言うならRIPをはじめ、そのシステム全体のワークフローの使い勝手や性能はかなり差がでてしまう。たとえば、今はまだ、CTPを動かすためにRIPを行うパソコンとDTP組み版するためのパソコンは一体ではないし、工程もわかれている。「データ送ったよ」という社内電話ではじめて、DTPとCTPは連絡がとれる有様だ。しかし、こういった過程もサーバー上で統一的に処理できれば、ワークフローの使い勝手は画期的に向上する。おそらく今回のCTP交換で目指すべきなのはレーザーの品質向上よりも、この工程の統合なのだろう。ここまでの統合が成し遂げられれば、最終的な完全なフルデジタル統合を謳歌することができるというわけだ。


 もちろん、フルデジタルといっても、それぞれの会社にふさわしいワークフローがあるばずで、特定の会社のシステムがどの会社にも適用できるわけではない。ワークフローといったって、直訳すれば「仕事の流れ」なのだから、会社会社で事情は違う。つまるところ我が社にとって、どの社のシステムが、完全なフルデジタル統合を設定できるか、これがCTP選択の肝だろう。


 ここまでわかってはいるんだけれど、性能や使い勝手だけで機材選択が決まるわけではないのが、機械選択。どんなハイテク機器であろうと、販社の営業の態度とか、値引きのタイミングとかで決まってしまうというのが常だった。実は、今この原稿を書いている時点ではまだどのCTPにするか決定していない。掲載される頃どういう結論になっているかが楽しみなわけだが、情や義理に負けて変な選択をしてしまわないよう、ここに書いて決意をしめしておきます。



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