第36回 コンピュータ時代の営業会議|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第36回 コンピュータ時代の営業会議

 こんな、題名をあげたからといって、テレビ会議システムを使った遠隔会議をやっているとか、派手なプレゼンテーションソフトを使って新商品の説明をやっているという話ではない。どこにでもある日常の営業会議である。前月の売り上げを元に新規得意先の開拓について情報交換したり、印刷関連の問題点を話し合ったりするあれだ。それが、コンピュータ時代になるとどうなるか。


 思えば、10年ほど前、5インチフロッピーディスクを見せて、「こういうのをもって帰っていただければ、うちで、入力する必要がなくなります。名付けてフロッピー入稿」とひとくさりやったのが、コンピュータ時代の営業会議のはじまりだった。それから、いろんなものを営業会議で説明してきた。「3.5インチのフロッピー」、「MS-DOS」、「MO」、「PS」、「マルチメディア」、「電子メール」、「インターネット」などなど。最近では、「TT」とか「PDF」をやりました。


 説明する方は切実である。ちゃん言っておかないと、わけのわからないフロッピーをもってかえってこられたり、トホホファイル(素人の作ったDTPファイル。印刷工程のことを配慮していないので使えない物が多い。この連載でもたびたびとりあげた)をめちゃくちゃな納期でもってかえってこられたりするからだ。


 「同じ3.5インチといっても、2DDと2HDがあってですね。おまけに、専用ワープロだとフォーマットが全然違ったりするんです。だから、クライアントによく内容を聞いてきてほしいのです」


 もちろん、こう言って説明したところで、営業が100%理解してくれるわけではない。彼らはなんといってもコンピュータには素人だ。しかも、聞いてこいと言ってもクライアント自身がよくわかっていない場合が多いし、コンピュータは生半可な知識ではむしろ墓穴をほる。しったかぶりで対応されるのもやっかいだ。


「できるって、言っちゃったんだよ。なんとかしてくれ」


 と、泣きつかれることも、多かった。 


 それでも、石の上にも3年。こうしたことを会議で言い続けていると、営業もお客さんの言う、たとえば「PDF」というような言葉に「ああ、それなら営業会議で聞いたな」ぐらいは思いだすし、経験を重ねた営業なら、そこで適当に相づちをうちながら、会社のコンピュータ部門へ連絡をとるなり、「あとで詳しい者をよこします」といって、その場を取り繕うことができるようになる。こうして、印刷と情報処理絡みの仕事もとれるようになってきた。こうなればしめたものである。


 最近では、営業の側から「会議で説明してほしい」と要請されることもおおくなった。それだけ、コンピュータ絡みには理解不能なことが多いらしい。この間も校正のときには出ていた字が、セッター出力してみると出ていないというような事件があって、厳しく説明をもとめられた。文字コードの基本から説き起こして、「TT」や「PS」の違い、各フォントのインストール状況まで。営業にとっても、コンピュータ絡みのこうした問題は切実だ。言い訳しなくてはならないもの。


 さて、3年にわたって、連載した当コラムも、いよいよ終わりの時期となりました。この3年間、いろいろありましたね。最初はすぐネタ切れになるかと思っていたけれど、コンピュータ関係の話題はつきることがありませんでした。またいつかどこかでお会いしましょう・・・・と書いていたのですが、まだ続くということが決まったようです。ではまた来年。



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