第54回 dpi lpi ppi|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第54回 dpi lpi ppi

 印刷物をコンピュータで作るようになって、新しい単位にいろいろお目にかかる。dpiもそのひとつで、最初は、電算写植の出力精度を表す言葉として登場してきた。ドット・パー・インチ。1インチあたりに何個の点が打ってあるかという単位で、数字が大きいほど精密だということだった。レーザープリンタだと300dpi、印画紙でだすと1200dpi、どこでどう計ったのか知らないが、活版は4000dpi以上に相当するといわれたりした。確かめようと、見当合わせ用のルーペで、細かい点々の数を数えてみたこともある。


 それが、画像ファイルを扱うようになって、似た単位にでくわすことになる。lpiである。lpiというとコンピュータ時代の新しい単位のようで馴染みがないが、実は網点の線数のことだ。印刷屋は線数に関してはちとうるさい。カラーなら175線。モノクロで150線。新聞だと100線というような固定観念をもっている。これがdpiと混乱してしまう。相当にコンピュータを長くやっているオペレーターでも、カラー写真は175線だから、出力も175dpiでいいのでしょうということをいいだす。あるいは、175線だと3500dpiは要るというのをうろ覚えにして、線数の20倍がdpiだと勝手に思いこんでいたりもする。


 私も、dpiとlpiはどういう関係なのだと不思議に思っていた。こんな重要な話なのに、あざやかに解説した物が意外にないのだ。この正解は、印刷雑誌のバックナンバーのどこかに詳しいことが載っているはずだが lpi=dpi/sqrt(出力階調)という関係にあるらしい。ルート!! これであまり解説したものがない理由がわかった。元々、マニュアルには数式をあまり書かない。数式を書くだけで、わかりにくいマニュアルだと血祭りにあげられるからだ。ましてや、ルートなんかもちだしたら、「こんなものつかえるか!」となってしまう。これではこの式をおおっぴらにするわけにはいくまい。


 もっとも、こんな式をいちいち意識しなくてもコンピュータが勝手に計算してくれる時代でもある。オペレーターはときどきコンピュータが「出力解像度の制限からこの線数では出力できません」といってくるのを見ていればいいだけなのだ。ただ、このメッセージがでたときにこの式を知っているのと知らないのでは対応に違いがでるのではないかと思うが。


 dpi lpi にくわえて、ppiというのもある。これはピクセル・パー・インチで画像入力のときにでてくる単位だ。やっかいなことに、これも解説本によってはdpiと表現されている場合がある。正直もうしますと、私はこのppiがもうひとつよくわからない。写真をそれぞれ点々に分解した場合の要素数だということはわかるが、これと出力解像度はどう関係してくるのだ? 最終出力が175lpiで出力階調を256階調とした場合、入力は原寸として何ppi必要かという問題をだされたらお手上げだ。これも、コンピュータが自動計算してくれるので、そんなこと気にしなくてもと言われそうだが、どうもこだわってしまう。おおむね、出力線数lpiの倍のppiで撮ってあればいいというのは聞くのだけれど、なぜなんだろう。印刷雑誌のどこかには書いてあるのでしょうけれどね。


 疑問ついでにもうひとつ。このまえ18000円で300dpiと書いたカラースキャナを買ってきたら、出力に1200dpiというオプションがあった。これはppiのことなんだと思うんだけれど、300ppiしか、スキャニングの画素がついていないのに、出力で1200ppiにできるんだろうか。実質300ppiしかないなら、精度は300ppi以上あがらない。これを無理に1200ppiにあげても、単に画像ファイルが大きくなって重いだけじゃないのかと思うが、どうなんだろう。



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