第82回 OS,SOS|学会誌・学術印刷全般・学会業務受託など、文化学術の発展に貢献する中西印刷

第82回 OS,SOS

 印刷がコンピュータ化されてこのかた「文字化け」ほど悩まされたものはない。「文字化け」はさまざまな原因で起こり続けた。ちょっと思いつくだけでも、出力フォント不統一、JISコードの無惨な改訂、メーカー外字の勝手な制定など、思い出しても憎たらしい。校正段階での文字化けはまだしも対処のしようがあるが、やっかいなのは、校正プリンタとイメージセッタやCTPで出力が違ってしまうというやつだ。検版や印刷段階で文字化けが判明すればいいのだが、製本もすんで商品になってから文字化けが発見されると、これはもう悲惨以外のなにものでもない。


 もちろん「文字化け」に手をこまねいていたわけではない。ひとつひとつ原因をつぶしていくことで、だんだん減っては来ていた。このまま、「文字化け」のない印刷会社になっていくのかと思っていたら、さにあらん。最近立て続けに「文字化け」の報告を聞くようになった。最初は新入社員のところで集中的におこったので、なにか新入社員が設定を間違えたかと思っていたのだが、原因を探っていって、とんでもないことがわかった。


 ある特定の組版ソフトがOSのバージョンアップに対応できていないらしい。新入社員の使う新しいコンピュータにプレインストールされているOSに組版ソフトがついていっていないのである。そういう目で、メーカーのホームページを調べると、OSの対応状況表というのがあって、件の最新OSは確かに、この組版ソフトの対象になっていない。対象になっていないとうたっているから、「文字化け」がおこったところで、それは組版ソフト使用者側の自己責任だといいたいわけなのだろうが、どうも釈然としないぞ。


 OSも最近はめまぐるしくかわっていく。Windows系列をとってみても、95がでたあたりから、98、me、XPとバージョンアップが重ねられていく。機能がふえて、使いやすくなるというのだから、文句を言う方が筋違いなのかもしれないが、印刷屋にとっては、期間の短いバージョンアップは迷惑以外のなにものでもない。印刷屋はいろいろなハードやソフトをくみあわせたシステムとしてコンピュータを使う場合が多いし、出力環境も普通のオフィスや家庭で使う物より一桁は精密だ。こんな環境の中で、OSがかわったら、一から全部セッティングのやり直しになってしまう。


 古いOSのまま使い続けられればいいのだが、新しいOSがでたら、古いOSを載せたコンピュータは一瞬にして市場から消えていく。買おうにも買えないのだ。中古を探すか、古いOSを別途単体で買って、ダウングレードするしかない。今回の場合などもOSをダウングレードして、古い物にあわよせようかという意見もでたのだが、今度は逆に新しいOSでしか走らないというソフトもあって、意見がまとまらない。いずれはこうした対象とはなっていないソフトも新しいOSに対応してくるだろうし、新OSの機能も機能として欲しい。いったいどう解決した物か?


 でまあ、うちの会社のオペレーターはひとつの机の上に、2台のコンピュータを並べて使うこととあいなってしまった。同じ2台のコンピュータを並べるにしても、デュアル画面なんて積極的な使い方ならいいのだけれど、今回の解決策は、使うソフトによってOSのバージョンの違うコンピュータを切り替えて使うという原始的な物だ。電算写植用のUNIXマシンと最近のDTPソフト用のWindowsマシンと並べているのは何人かいるが、OSのバージョンがちょっと違うだけのコンピュータを2台並べるというのは、あまりにあまりではある。


 いずれにしても、OSがかわるならかわるで、ソフトメーカーは対応をもっと真剣にやって欲しい。でなければ、一緒にOSのバージョンアップに異議をとなえる運動でもやりますか?



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